林業の補助金とは?種類・金額・申請方法まで初心者向けにやさしく解説

林業に従事している方の中には、「補助金を使って設備投資をしたい」「申請すればいくらもらえるのか知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、補助金制度は種類が多く、自治体ごとに条件や内容が異なるため、何から調べてよいかわからないという声も少なくありません。

この記事では、林業従事者の方が活用できる補助金の種類や金額、申請方法などをわかりやすく整理し、2025年最新版の情報としてお届けします。

あわせて、「ナラシ対策との違い」や「スマート林業支援」など関連する支援制度にも触れながら、現場で役立つ内容を丁寧に解説していきます。

目次

林業の補助金とは?仕組みと目的をやさしく解説

林業の補助金

林業の現場にはなぜ補助金が必要なのか

林業は、自然環境や天候に大きく左右される不安定な産業です。木材価格の変動や作業環境の厳しさ、人材不足など、多くの課題を抱えています。

特に小規模な林業経営者にとっては、高額な機械導入や安全対策への投資が難しく、必要とわかっていても一歩を踏み出せないことが少なくありません。

こうした背景を受け、国や自治体は林業の担い手を支えるため、設備投資や労働環境の整備などに対して補助金を交付しています。

補助金は単なる金銭的な支援にとどまらず、持続可能な森林経営の実現や、地域における林業の振興にもつながっています。

補助金と助成金の違いとは

補助金は、国や自治体が特定の事業や取り組みに対して、一定の条件のもとに交付するもので、多くの場合は事前の申請や審査が必要です。交付後には、報告書の提出などが求められるケースもあります。

一方、助成金は、比較的申請条件が緩やかで、要件を満たせば交付される制度です。厚生労働省などが実施する雇用関係の助成金が代表例といえます。

以下の表は、補助金と助成金の主な違いをまとめたものです。

項目補助金助成金
管轄主に経済産業省・農林水産省・自治体など主に厚生労働省・自治体など
主な目的事業の促進、設備投資など雇用維持、人材育成など
申請方法公募制・審査あり要件を満たせば申請可能
採択数予算に応じて制限あり(競争)条件を満たせば原則支給(非競争)
申請時期公募期間内に限られる随時受付の制度も多い
対象法人・個人事業主など法人・個人事業主など
申請の手間手続きが多く、報告書も必要手続きは比較的少ない傾向

林業では、両方の制度が使われているため、それぞれの特徴を理解したうえで、対象となる制度を探すことが重要です。

林業従事者が活用できる補助金の種類一覧

市民窓口行政の窓口

主な補助金の分類と使い道

林業の現場で活用できる補助金は、主に3つの目的に分類されます。

  1. 設備投資・機械導入支援
  2. 労働安全対策支援
  3. 人材確保や定住促進支援

それぞれに対応する制度や補助内容が異なるため、自分の目的に合った補助金を選ぶことが重要です。

設備投資・機械導入に使える補助金

高性能林業機械(ハーベスタやフォワーダなど)の導入には、多くの費用がかかります。こうした機械を導入する際に活用できるのが「森林整備事業補助金」などの設備投資系の補助金です。

これらは、伐採・集材・搬出などの作業効率を高め、労働力不足の解消やコスト削減にもつながる重要な制度です。

労働安全対策に関する支援制度

林業は、転倒やチェーンソー事故などのリスクが高い産業です。安全対策にかかる費用(安全装備の購入、安全研修の実施など)を補助する制度も用意されています。

たとえば「林業・木材製造業労働災害防止協会」などが実施する研修支援や、安全対策を目的とした装備補助などが該当します。

人材確保・移住支援に使える補助金

林業に新たに参入する若者や、地方に移住して林業を始めたい人を対象とした支援制度もあります。

「就業支援給付金」や「地域おこし協力隊制度」などを通じて、住居費や生活支援金を受け取れるケースもあり、都市部からの移住を後押しする目的で実施されています。

表:林業従事者が使える補助金・支援制度まとめ(例)

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名称目的支給額目安対象管轄
森林整備事業補助金機械導入・整備上限500万円(例)法人・個人事業主林野庁/自治体
林業安全対策補助安全装備の購入等上限100万円(例)林業事業体等自治体・労災防止団体
就業支援給付金新規就業支援月12万円×最大2年新規従事者自治体・都道府県
地域おこし協力隊地域定住・人材確保月20万円+住居補助都市部出身者総務省/自治体

※金額や条件は自治体や年度によって異なるため、最新情報をご確認ください。

金額はいくらもらえる?主要補助金の支給額と実例

木を倒す機械

支給額の相場と上限の目安

林業の補助金制度では、支給額は補助金の種類や対象となる取り組みによって大きく異なります。機械導入にかかる補助金では、1件あたり数百万円規模の支援を受けられるケースも少なくありません。

たとえば、森林整備事業補助金では、最大で500万円〜1,000万円前後の支援を受けられる場合もあります。ただし、自治体ごとに上限額や自己負担割合が設定されているため、申請前に詳細を確認することが大切です。

また、安全装備の購入や人材育成に関する補助金では、数万円〜100万円程度の支給が中心です。こうした制度は個人事業主でも活用しやすく、負担を大きく減らせるメリットがあります。


実際に補助金を活用したケース

ここでは、実際に補助金を活用して設備や人材を強化した事例を簡単に紹介します。

事例①:個人林業経営者が高性能チェーンソーを導入(40万円)
個人で山林を管理している方が、安全性能の高いチェーンソーと防護装備一式を購入。自治体の安全対策補助金を活用し、約40万円のうち30万円が補助対象となりました。自己負担は10万円程度で済み、安全性と効率が向上しました。

事例②:法人がフォワーダ導入に補助金活用(約600万円)
年間を通して素材生産を行っている法人が、材の搬出効率を高めるためフォワーダ(集材機)を導入。森林整備事業補助金を活用し、機械購入費用のうち約600万円が補助されました。採択までに必要書類の準備や担当者との調整がありましたが、結果的に生産性が大きく改善されました。

補助金を申請できる人の条件とは?

個人事業主や小規模林業者も対象になるのか

林業補助金の多くは、法人や団体を対象にしていますが、条件を満たせば個人事業主や家族経営の林業者でも申請が可能です。

たとえば、森林整備や林道整備などの作業に従事している場合、作業内容や作業地の規模に応じて補助の対象になることがあります。地域によっては、特定の山林を所有または管理していることが条件になるケースもあるため、自治体の要件を事前に確認しておくことが重要です。


補助対象となる「林業従事者」とは誰か

補助金制度では、「林業従事者」という言葉がよく使われます。これは、素材生産業(伐採・搬出など)に従事する事業者や、森林の整備・保育・間伐などの作業を行う労働者を含みます。

具体的には、以下のような立場の人が補助対象になる可能性があります。

  • 森林組合や林業法人に所属する従業員
  • 自営業の林業従事者(個人事業主)
  • 地域の素材生産グループや共同作業体
  • 新規就業者(一定の研修・実績が必要)

なお、「自伐型林業」のように、個人が小規模に山林を管理・活用するスタイルでも、補助対象になる制度が増えてきています。


対象者の条件は制度によって異なる

補助金ごとに、以下のような要件が設定されています。

よくある条件内容例
活動の実績過去に一定の作業実績があること
所有・管理地補助対象の山林を管理していること
計画の提出作業計画書や実施計画を提出できること
研修の受講安全研修や技術講習を受けていること
所得制限一部制度では所得上限の制限あり

各制度の詳細を確認することで、自分が対象になる補助金を正確に選ぶことができます。

補助金申請の流れ【5ステップで解説】

補助金で設備導入する場合のフロー図林業

ステップ1:自治体や窓口で制度の内容を確認する

まずは、自分の地域でどのような補助金制度が実施されているかを確認します。林野庁のサイトや各都道府県の森林担当課、市町村のホームページなどが主な情報源です。

制度によっては、林業協会や森林組合、地元の支援機関が窓口となっているケースもあります。事前に電話や窓口で相談することで、制度の詳細や申請方法について丁寧に教えてもらえることが多いため、積極的に活用しましょう。


ステップ2:補助対象となる活動を整理する

補助金は「目的が明確であること」が前提です。どの山林で、何を、どのように行うのかを整理しましょう。

たとえば、

  • 高性能機械の導入(例:フォワーダ)
  • 労働環境の改善(例:安全装備の購入)
  • 担い手育成(例:研修参加や人材雇用)

といったように、補助対象となる具体的な活動を洗い出しておくと、次のステップがスムーズになります。


ステップ3:必要書類を揃え、申請書を作成する

申請には、所定の申請書や計画書、見積書、事業概要、対象山林の図面・写真などが必要です。制度によっては、作業内容や予算を記載した実施計画書の提出も求められます。

あらかじめ必要書類をチェックリスト形式で整理し、不備がないように揃えていきましょう。窓口担当者に確認してもらいながら作成すると、書類不備による再提出を防げます。


ステップ4:審査・採択を待つ

提出後は、自治体や関係機関による内容確認・審査が行われます。審査期間は制度によって異なりますが、1か月〜2か月程度が目安です。

一部の制度では、現地確認やヒアリングを実施する場合もあります。申請内容が審査基準を満たしていれば、正式に採択通知が届きます。


ステップ5:事業の実施と報告書の提出

採択後、指定された期間内に作業を行い、必要な書類(実績報告書・写真・領収書など)を提出します。

報告書には、実施内容や支出内容の詳細を記載する必要があるため、作業中から写真や記録をこまめに残しておくことが重要です。報告内容が受理されれば、補助金が交付されます。


参考:申請時に注意したいポイント

注意点内容
申請書の書き方専門用語を使いすぎず、わかりやすく記載する
不備があると不採択書類の不備があると審査対象にならないことも
締切を厳守公募期間を過ぎると一切受け付けられない
補助率の確認自己負担が必要な場合もあるので事前に確認する

都道府県別の特徴ある補助金制度【一部紹介】

東京都:都市近郊林業への支援が充実

東京都では、都市部に残された森林を活用し、地域住民との関わりを持たせる取り組みを重視しています。森林環境の保全や、木材の地産地消を推進する補助制度が展開されており、小規模な整備や啓発活動にも支援が行われています。

例として、「森林保全事業補助金」では、間伐作業や林道整備に対する支援のほか、教育機関との連携プロジェクトにも助成が出るケースがあります。


千葉県:地域ぐるみの素材生産と担い手育成に力

千葉県は、素材生産の効率化と担い手確保に重点を置いています。若年層向けの研修支援や、林業専用機械の導入支援制度が整っており、「林業労働安全対策補助事業」なども実施中です。

また、森林経営計画を策定した団体に対して、独自に追加支援を行うなど、国の制度と組み合わせた柔軟な支援が特徴です。


北海道:広大な森林資源を活かしたスケールの大きな支援

北海道は面積が広く、森林資源が豊富なため、大規模な林業経営者に対する補助金が充実しています。特に、「高性能林業機械の導入支援」や「林道新設・改良事業」への補助が多く、1件あたりの支給額も比較的高めに設定されています。

さらに、寒冷地特有の作業環境に配慮した安全装備の補助制度や、道内人材の定着支援制度も併用可能です。


その他の都道府県でも多様な支援あり

上記以外にも、各自治体で地域の特性に応じた補助制度が設けられています。たとえば、

  • 長野県:中山間地での小規模林業支援
  • 岐阜県:技術者育成と森林バンクの連動支援
  • 熊本県:水源林の保全に関連した助成

など、それぞれに独自性のある取り組みが行われています。


表:都道府県別 林業補助制度の一例(抜粋)

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都道府県主な補助制度特徴
東京都森林保全事業補助金地域との連携活動も対象
千葉県林業労働安全対策補助若手育成と機械導入支援が充実
北海道高性能林業機械導入補助補助額が大きく、広域対応可能
長野県自伐型林業支援制度小規模事業者向け制度あり
熊本県水源林保全事業公益性の高い森林に特化

※最新の募集状況は、各自治体の公式サイトをご確認ください。

補助金と併用できる支援制度まとめ

人工の杉の森

スマート林業導入支援

近年注目されているのが、「スマート林業」への転換を支援する制度です。ICT技術やドローン、GIS(地理情報システム)などを活用した森林管理を推進する取り組みに対して、機材購入費や導入支援費用が補助される制度があります。

特に、国の補助制度だけでなく、都道府県や市町村でも独自のスマート林業支援が設けられており、林業の効率化や安全対策の強化を図りたい方にとっては大きな後押しとなります。

>詳しくは「スマート林業とは」の記事で解説しています。


収入保険制度

天候不良や木材価格の下落によって収入が減った場合に備える「収入保険制度」は、補助金制度と併用することでリスク分散につながります。

収入保険では、過去の平均収入に基づいて一定の割合で補償が受けられる仕組みとなっており、自然災害や需要低迷による経済的ダメージから経営を守るための備えとして注目されています。

>「収入保険とナラシ対策の違い」もあわせてご覧ください。


ナラシ対策

「ナラシ対策」は、収入保険と似た制度ですが、あらかじめ設定された基準収入を下回った場合に補てんされる仕組みです。こちらも林業経営の安定を図るために利用でき、対象者の条件や掛金が異なるため、どちらを選ぶかは事業規模や経営方針によって判断する必要があります。

補助金で設備投資を行いつつ、こうした制度で収入リスクを減らすことで、より長期的な林業経営の安定が期待できます。


その他の併用可能な支援制度(例)

制度名主な目的備考
地域おこし協力隊地方での林業人材確保月額報酬+住居支援
雇用助成金若年層の林業従事者雇用厚労省所管、雇用条件あり
森林環境譲与税地域森林整備の原資自治体が整備に充当、個人向け制度も一部あり

よくある質問(Q&A)

個人事業主でも補助金は申請できますか?

はい、制度によっては個人事業主や自営業者でも申請可能です。
特に小規模な林業経営や自伐型林業を行っている方を対象とした補助制度もあります。
ただし、所有している山林の規模や作業実績、提出書類の内容によって判断されるため、事前に自治体窓口で確認しておくことが大切です。

申請が通らなかった場合はどうなりますか?

補助金は審査制のため、採択されない場合もあります。
その場合でも、申請書を再構成して次回以降の募集に再チャレンジできるケースが多くあります。
また、採択されなかった理由を担当窓口に確認することで、次回以降の改善点が明確になります。

複数の補助金を同時に利用することはできますか?

制度によっては併用可能なケースもありますが、同一の経費に対して重複して補助を受けることは原則できません
たとえば、同じ機械導入に対して複数の補助を受けることはできない一方で、「機械はA制度」「人材研修はB制度」といった形で、目的が異なれば併用できる場合もあります。

補助金を使った設備に制限はありますか?

補助対象となる設備や物品は、各制度で定められた要件に合致する必要があります。
たとえば、「国内メーカーに限る」「特定の用途に限る」「耐用年数の基準がある」などの条件が付くこともあるため、見積取得の段階で必ず仕様を確認しましょう。

途中で事業を中止した場合、返還義務はあるのですか?

そのため、事業が完了するまで責任を持って実施し、必要書類を確実に提出することが重要です。

まとめ|林業補助金を活用して、無理のない経営と安全な現場づくりを

チェーンソーで切った枝

林業は自然と向き合う厳しい現場でありながら、地域経済や環境保全において重要な役割を果たしています。その現場を支える手段のひとつが「補助金制度」です。

本記事では、林業従事者が利用できる補助金の種類、支給額の目安、申請方法から他制度との併用まで、幅広くご紹介しました。
設備投資や安全対策、人材確保など、現場の課題に合わせて使える制度は多岐にわたります。

そして、補助金制度は「制度を知っているか」「うまく活用できるか」で、現場の負担や将来の展望が大きく変わります。だからこそ、地域の制度を確認し、必要に応じて専門窓口と連携しながら活用していくことが大切です。

これから林業に挑戦する方も、すでに現場で働いている方も、
無理のない経営、安全な労働環境、そして継続可能な林業のために、補助金を味方につけてください。

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