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ナラシ対策とは?令和3年発動の実例と収入保険制度との違いをわかりやすく解説

農業には、天候や市場価格の変動など、予測が難しいリスクがつきものです。

「収穫量が減ってしまった」「価格が下がって収入が大きく落ちた」——

そんなときに、経営を安定させるための制度が「ナラシ対策(正式名称:経営所得安定対策交付金)」です。聞いたことはあるけれど、「どんな制度なのかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ナラシ対策の仕組みや対象、補てん内容、加入方法までをわかりやすく解説します。さらに、収入保険制度との違いや、それぞれの選び方についてもご紹介しています。将来のリスクに備えたい農家の方にとって、ナラシ対策をわかりやすく解説します。

目次

ナラシ対策とは?仕組みをわかりやすく解説

広大な畑

ナラシ対策とは、農業者の方が自然災害や価格の下落などによって収入が大きく減少してしまったときに、国がその損失の一部を補てんしてくれる制度です。

正式には「経営所得安定対策交付金」のうちの一つで、「収入減少影響緩和交付金」とも呼ばれています

農作物の収量や販売価格は、自分ではコントロールできない要素に大きく左右されます。そのため、「ある年は大きく稼げたのに、次の年には赤字になった」というケースも珍しくありません。

そうした収入の波を“ならす(=平準化する)”ために設けられたのが、このナラシ対策です。

どれくらい減ったら補てんされるの?

補てんの対象となるのは、「収入が基準収入の9割を下回った場合」です。基準収入とは、過去数年の平均収入などから算出される金額のことです。

たとえば、基準収入が100万円だった場合、90万円を下回った分について補てんが行われます。具体的には、その差額の90%が交付金として支給されます。

ナラシ対策の対象作物と加入条件

安全運転している機械

ナラシ対策は、すべての農作物が対象というわけではありません。対象となるのは、国が指定した「土地利用型作物」が中心です。

以下の表は、ナラシ対策の対象となる主な作物と、加入できる経営体の条件をまとめたものです。

対象作物一覧

作物名備考
飼料用米・加工用米も対象
小麦・大麦など
大豆国産の大豆
そば加工・出荷用
てん菜砂糖の原料となる作物
でん粉原料用ばれいしょ(食用でなく加工用)
さとうきび主に九州・沖縄地方で生産

加入できるのはどんな人?

  • 個人農家または農業法人
  • 対象作物を作付けしており、販売している
  • 農業共済に加入している(または加入予定)
  • JAなどを通じて申請手続きを行うことができる

ナラシ対策の仕組みと補てんの内容

稲畑の様子

ナラシ対策では、収入が一定の水準を下回った場合に、その不足分を国が補てんしてくれる仕組みになっています。正式には「収入減少影響緩和交付金」と呼ばれています。

ナラシ対策の基本的な仕組み

以下の図のように、「基準収入」と「実際の収入」を比べて、差が出たときに補てんが行われます。

補てんの流れ(図解イメージ)

項目内容
基準収入過去数年の平均収入などから算出される目安の金額
実際の収入当年の販売実績に基づく収入
補てんの条件実収入が基準収入の90%未満になったとき
補てんされる割合差額の90%が交付金として支給される

具体的な計算例

基準収入が100万円で、実際の収入が70万円だった場合、次のように補てんされます。

  • 基準収入の90% → 90万円
  • 実収入が70万円 → 90万円を20万円下回っている
  • 補てん額は 20万円 × 90% = 18万円

つまり、18万円が交付金として支給されることになります。

掛金(自己負担)もある

ナラシ対策を利用するには、事前に掛金(保険料のようなもの)を支払う必要があります。掛金の金額は、作物や地域、生産量によって異なりますが、一部は国からの補助があるため、農家の負担は軽減されています。

令和3年に発動されたナラシ対策の実例とは?

大豆が実っている様子

令和3年(2021年)は、全国的に天候不順や自然災害の影響を受けた年でした。この影響により、多くの地域で農作物の収量や価格が下がり、ナラシ対策が発動されたケースが複数報告されています。

令和3年は、全国でナラシ対策が発動された年でもあります。

令和3年に発動された主な例

地域作物名発動の理由
北海道ばれいしょ長雨と日照不足による収量減少
秋田県高温障害・収量低下
九州(全域)さとうきび台風被害
全国的麦・大豆市場価格の下落

※農業共済組合や各都道府県からの発表をもとに再構成

このような発動実績を見ることで、制度の信頼性や「入っておいて良かった」と感じる農家の声も多く寄せられました。

ナラシ対策のメリットとデメリット

レタス畑

制度を理解する上で大切なのは、「どんな良い点があるのか」「逆に注意すべき点は?」ということです。ここでは、ナラシ対策のメリットとデメリットをわかりやすくまとめていきます。

ナラシ対策のメリット

メリット内容
収入が減っても安心できる異常気象や価格下落があっても補てんで経営を安定できる
リスクに備えた“守り”の経営ができる安定収入が見込めることで、設備投資や計画的経営につながる
掛金の一部は国が負担してくれる掛金の全額を自己負担しなくてよいため、制度としてのハードルが低い
比較的シンプルで使いやすい収入保険制度に比べて、加入や運用が分かりやすいという声も多い

ナラシ対策のデメリット

デメリット内容
対象作物が限られている米・麦・大豆などの土地利用型作物のみが対象で、園芸作物などは対象外
加入要件や事務手続きが必要農業共済への加入、収入の確認、申請手続きなどの手間がかかる
掛金の負担がある掛金が年ごとに必要で、経営が苦しいときには負担に感じることもある
毎年の制度変更に注意が必要補てん率や基準が見直される場合もあるので、定期的な確認が必要

制度にはもちろん魅力的な点がたくさんありますが、「本当に自分に必要か?」「費用対効果はどうか?」といった視点で考えることが大切です。

収入保険制度をわかりやすく比較!ナラシ対策との違いとは?

棚田の風景

農業経営のリスクに備える制度には、「ナラシ対策」のほかに「収入保険制度」もあります。 どちらも収入が減ったときに補てんされる制度ですが、仕組みや対象、加入要件が大きく異なります。

違いがひと目で分かる!比較表

項目ナラシ対策収入保険制度
対象作物米・麦・大豆などの土地利用型作物すべての作物が対象(園芸もOK)
加入条件対象作物の作付・販売+農業共済加入青色申告を2年以上行っていること
補てん条件基準収入の90%を下回った場合平均収入の90%を下回った場合
補てん率差額の90%差額の90%
掛金年ごとの掛金あり(国の補助あり)掛金あり(国の補助あり)
申請・管理比較的シンプル書類が多く、手続きや管理がやや複雑
利用のしやすさ導入しやすい(初心者向け)ややハードルが高め(上級者向け)
制度の目的作物ごとの価格・収量リスクに対応経営全体の収入変動に対応

どちらを選ぶべき?

農業を始めたばかりで、青色申告に慣れていない方には…
ナラシ対策が現実的で安心感も高い選択肢

作物を多品目で作っていて、青色申告も継続している方には…
収入保険制度のほうが全体をカバーできる可能性あり

切り替えもできる?

ナラシ対策と収入保険制度はどちらか一方しか利用できませんが、年度ごとに選択できます。 「最初はナラシ対策→ゆくゆくは収入保険制度へ移行」という流れで制度を使いこなす農家も増えています。

ナラシ対策の加入方法と申請の流れ

稲刈りの風景

ナラシ対策は、加入したいと思ったタイミングですぐに利用できるわけではありません。 事前の申請や手続きが必要で、年度ごとに申込期限も決まっています。

加入から交付までの流れ

手順内容
加入相談:JAや農業共済組合などに相談し、自分が対象になるか確認します。
書類の提出:対象作物の作付面積や収入実績、農業共済加入状況などを記載した申込書を提出。
掛金の支払い:必要な掛金(年額)を支払います。作物や面積に応じて金額は異なります。
登録完了:申請が受理されると、その年のナラシ対策の対象になります。
補てん発動時の申請:実際に収入が下がった年には、別途補てん申請を行います。

申請時期の目安

ナラシ対策の申請時期は毎年春〜初夏(例:4月〜6月)に設定されることが多く、地域や作物によって異なります。最新情報はJAや農業共済組合の窓口で確認するのが確実です。

注意点

  • 制度を利用するには、農業共済(収入保険とは別)への加入が必要です。
  • 掛金の支払いが遅れると、対象外になる可能性があります。
  • 制度内容は毎年変更が入る可能性があるため、こまめな確認が重要です。

ナラシ対策を使った人・やめた人のリアルな声

農家のおじさん

ナラシ対策は、実際に利用している農家の方からも、さまざまな声が聞かれます。 ここでは、制度を「続けている人」と「やめた人」、それぞれのリアルな意見をご紹介します。

制度を続けている人の声

  • 「大雨で収量が落ちた年に補てんがあって、本当に助かった」
  • 「毎年の不安がひとつ減った。精神的にも安心して作業ができる」
  • 「JAで説明を受けながら加入できたので、難しいことはなかった」

収入の不安を軽減できるという安心感が、継続の理由として多く挙げられています。

制度をやめた人の声

  • 「毎年申請や計算がちょっと面倒で、結局やめてしまった」
  • 「うちの作物は対象じゃなかったので、収入保険に切り替えた」
  • 「掛金が地味に負担で、メリットを感じにくかった」

事務作業や制度の複雑さ、対象作物の制限がネックになるケースもあるようです。

どちらの声も参考に

ナラシ対策は、誰にとっても最適な制度というわけではありません。 自分の作物や経営スタイルに合っているかを見極めたうえで、納得した選択をすることが大切です。

まとめ|ナラシ対策と収入保険、どちらを選ぶべき?

水田を見ながら土手に座る農家のおじいちゃん

ナラシ対策は、自然災害や価格下落といったリスクから農業経営を守るための、国の支援制度です。 土地利用型作物(米・麦・大豆など)を作付けしている方であれば、比較的ハードルが低く加入しやすい制度といえるでしょう。

一方、すべての作物を対象とする収入保険制度もあります。 青色申告の実績があれば、より広範囲なリスクに対応できる制度です。

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自分に合った制度を選ぶポイント

状況向いている制度
青色申告ができない/農業を始めたばかりナラシ対策
複数作物を育てていて収入の変動が大きい収入保険制度
手続きの負担を少なくしたいナラシ対策
経営全体の収入を保険でカバーしたい収入保険制度

将来的には、収入保険制度への一本化が検討される可能性もあります。そのため、「まずはナラシ対策からスタートして、制度に慣れたら収入保険へ移行する」という選択肢も、現実的です。

農業は自然と向き合う仕事だからこそ、いざというときに備えられる制度を味方にして、安心して作業に取り組めるようにしておきたいですね。

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