
雨が降ると、登山の予定をキャンセルする人が多いかもしれません。
でも実は、雨の中の登山だからこそ出会える風景や体験があることを、あなたは知っていますか?
もちろん、滑りやすさや低体温症といったリスクもありますが、しっかりとした装備と準備があれば、雨の登山は決して怖いものではありません。
この記事では、安全に楽しむための装備・判断・コース選びのコツまで、まるっと紹介。
「雨の日も登りたい」「自然の魅力をもっと深く感じたい」——そんなあなたのための一歩を、今ここから踏み出してみませんか?
雨の日でも登山できる?まずは基本を押さえよう

雨の登山。登山者が感じるの魅力とは?
雨が降ると、多くの人が登山を敬遠します。
でも実は、雨の日にしか味わえない「山の顔」があるんです。
しっとりと濡れた木々、葉の緑が一層鮮やかに映え、霧がかかる景色はまるで幻想世界。
晴天では味わえない静寂と、自然との深い一体感がそこにはあります。
また、雨天の日は登山者も少なく、混雑のない静かな山歩きが楽しめるのも大きな魅力。
さらに、雨音やしずくの落ちる音に耳をすませると、心がスッと整っていく感覚に包まれるはずです。
これはまさに、五感で味わう「癒しの登山」といえるでしょう。
晴れの日との違いと注意点

とはいえ、雨の登山は晴れた日とは大きく異なります。
視界が悪くなったり、足元が滑りやすくなるため、事前の準備と慎重な行動が求められます。
また、雨による体温低下にも注意が必要。
濡れた状態で風にさらされると、体温が急激に奪われ、低体温症のリスクが高まります。
それでも、しっかりとした装備と計画を立てて臨めば、雨の登山は「危険」ではなく「深い楽しみ」に変わります。
次章では、登山前に確認しておきたい「天気予報」と「中止判断のライン」について詳しく見ていきましょう。
登山前に確認すべき「天気予報」と判断基準

雨天中止の判断ライン
登山において、「行く・やめる」の判断は命に関わる重要ポイント。
とくに雨の日は慎重すぎるくらいでちょうどいいんです。
では、どこが「中止のライン」なのでしょうか?
- 雷注意報が出ている → 絶対中止
- 強風(風速10m以上) → 中止を強く推奨
- 豪雨・大雨警報 → 危険性高し、中止が無難
- 前日からの連続降雨で沢や川の増水が懸念される → 中止を検討
逆に「弱い雨(小雨)」で、整備された登山道・標高の低い山であれば、しっかり準備したうえで実行可能な場合もあります。
ここで大切なのは、無理をしない「下山の選択肢」も常に持つことです。
山の天気は変わりやすい理由

平地の天気が晴れていても、山の天気は別物。
標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃下がり、山の上では予想外の雨や風に見舞われることも少なくありません。
山間部では地形による上昇気流や、周囲の谷風・山風の影響で、急な天候変化が起こりやすいんです。
「朝は晴れてたのに、昼から土砂降りになった…」なんてのもよくある話。
だからこそ、登山前には必ず以下の天気情報をチェックしましょう:
- 気象庁の詳細天気予報(山岳エリア指定)
- 登山特化型アプリ(YAMAP、tenki.jp登山天気など)
- 雨雲レーダー(1時間後の予測)
そして、現地に着いたときに「空の色」「風の匂い」「雲の動き」などを自分の五感でも確認することが、最終判断のカギになります。
雨の中の登山装備【レインウェア完全ガイド】

防水性と透湿性の違い
登山でのレインウェア選びで重要なのが、防水性と透湿性のバランスです。
防水性は読んで字のごとく、雨を外から通さない性能。一方で透湿性は、体の中から出る汗や蒸れを外に逃がす機能のこと。
安いカッパなどは防水性が高くても透湿性がほぼゼロなものが多く、内側が汗でびっしょり→低体温症リスクアップにつながります。
登山用には「耐水圧20,000mm以上」「透湿度10,000g/m²/24h以上」がひとつの目安。
ゴアテックス素材などを使用した登山専用レインウェアなら、快適性と安全性の両方を確保できます。

雨登山のレインウェアの選び方と着方

選ぶときは以下のポイントをチェック:
- フードがしっかりフィットするか(風で脱げない)
- 止水ジッパーやシームテープが施されているか
- サイズ感はやや大きめ(下にベースレイヤーを着られるように)
- パンツ付きの上下セットタイプが基本
着用時は、「内側に汗がこもらないよう調整できるベンチレーション」「裾をしっかり閉じる」「フードのバイザーを前に出す」など、濡れにくく快適に保つ工夫も忘れずに。
おすすめアイテムとレイヤー構成(ベースレイヤー含む)

雨登山の基本は3レイヤー構成:
- ベースレイヤー(肌着):吸汗速乾の化繊 or メリノウール
- ミドルレイヤー(保温):フリースや薄手ダウンなど
- アウターレイヤー(防水):レインウェア(防水透湿)



これに加えて、以下のアイテムもマスト級:
- レインハットまたはキャップ+フード(顔が濡れにくくなる)
- ゲイター(スパッツ):ぬかるみ対策
- 防水グローブ:冷え対策&岩場対策
- ザックカバー:荷物も絶対濡らさない
- 替えの靴下・手袋:予備で持参必須!
これらをそろえるだけで、「快適さ」も「安全性」もレベルアップします。
安全第一!雨の日の登山はリスクと対策をしっかり

滑落や転倒の危険性
雨で濡れた登山道は、まるで氷の上のように滑る場所もあります。
特に危険なのが、木道・岩場・苔の生えた斜面・落ち葉の積もった坂道。
実際に発生している事故の多くは、足を滑らせたことによる転倒や滑落です。
こうしたリスクに対抗するには、以下のような対策が有効です:
- 滑りにくいソールの登山靴を選ぶ
- トレッキングポールで常に3点支持を意識する
- 慎重な歩き方で「小さく歩く」(特に下り坂)
「大丈夫やろ」は絶対禁句。登山道が濡れているだけでリスクは何倍にもなるという意識が大切です。
低体温症を防ぐには

雨の日の登山で最も注意すべきなのが低体温症です。
気温が15℃以下になると、濡れた衣服+風で体温が一気に奪われ、気づかないうちに震え・判断力の低下・意識障害が起きてしまいます。
予防のためにできること:
- 濡れない工夫:防水性+透湿性の高いレインウェアの着用
- 冷えにくい工夫:ベースレイヤーは綿NG。メリノウールや化繊がベスト
- こまめな行動食+休憩でエネルギー補給
もし症状が出始めたら、すぐに風を防げる場所で保温し、無理せず下山を判断することが命を守るカギです。
判断を誤らないための準備
「せっかく来たから登る」「ここまで来たしもう少し」
——この心理的な判断ミスが事故を招く最大の要因です。
登山前に自分へこう言い聞かせましょう:
「中止も立派な判断」
登山は「挑戦」ではなく「自然との対話」。
撤退する勇気が、一番の安全対策です。
歩き方と登山道の注意点

濡れた岩・木道で滑らない歩き方
雨の日の登山では、滑りやすい場所=危険ゾーンと心得るべし。
特に注意が必要なのは以下のポイント:
- 木道や木の根っこ(雨でツルツル滑る)
- 岩場や濡れた石の表面(コケがあると特に危険)
- 落ち葉が重なった斜面(見た目以上に滑る)
じゃあ、どう歩けばいいか?
- 重心を落とす(膝を軽く曲げて常に「低く」)
- 足裏全体で地面をとらえる(つま先着地はNG)
- 滑る前提で「一歩一歩丁寧に」歩くこと
トレッキングポールがあるなら、常に3点支持(両足+ポール)を意識しよう。
下り坂では、後ろ足にしっかり体重を残すのがコツです!
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ぬかるみや増水にどう対処するか
雨の登山では、ぬかるみと水たまりの回避がカギ。
まず、ぬかるみにハマると、足元を取られて転倒の原因になります。
そんなときは:
- 無理せず「岩や根っこ」の上を踏むルートを選ぶ
- ゲイター(スパッツ)で泥の侵入を防ぐ
- ソールのグリップがしっかり効く靴を選んでおく
次に怖いのが「沢の増水」。
普段は渡れる小さな沢も、雨が続くと急に流れが強くなり、足元をすくわれる危険があります。
- 水位が上がっていたら、無理せず引き返す勇気を
- どうしても渡る場合は、流れが弱く・水深が浅い場所を選ぶ
「雨で地形が変わる」ことを前提にして、常に柔軟なルート判断を!
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日帰りハイクにもおすすめ?雨が降っても楽しむ方法

森や沢の魅力を感じるポイント
雨の日の森は、晴れの日とはまるで別世界。
木々の葉がしっとりと濡れ、緑の色味が数段深く、鮮やかに映えます。
特にブナやカエデの林、苔むした岩や木の根は、雨と相性抜群。
水滴が葉にたまり、ぽたぽたと落ちる音を聞きながら歩く時間は、自然のBGMに包まれた癒しの時間。
沢沿いのコースでは、水量が増すことで滝や渓流がダイナミックに変化し、まるで別の山に来たかのような感動があります。
雨音や霧の幻想的な風景を楽しむコツ
霧がかかる登山道は、どこか異世界のよう。
視界が制限されることで、目の前の一歩一歩に集中でき、没入感が高まります。
また、雨音がすべての雑音をかき消してくれるので、自分の呼吸や足音が心地よく感じられる瞬間も。
これは晴天の登山ではなかなか味わえない体験です。
日帰りハイクなら、短時間でもこの世界観にどっぷり浸かれる。
雨の日だからこそ「心が整う登山」ができるんです。
雨の登山でも快適に楽しむための山でも「心と身体」の整え方

梅雨時期でも登山を楽しむには?
梅雨の時期は、天気の変化が激しく、登山にとっては敬遠されがちな季節です。しかし、梅雨だからこそ出会える風景や空気感があります。しっとりと濡れた緑、霧の中に浮かぶ幻想的な木々の姿、静けさが増した登山道など、晴れの日とは異なる「静かな魅力」を堪能できます。
雨が降っても動じない!登山中の心の整え方
実際に雨が降ってきたときの心構えも大切です。「雨が降って不安」「滑ったらどうしよう」と事前に想定していれば、動揺せずに行動できます。むしろ、「雨が降るかも」と思って準備していれば、想定内として対応できます。
特に体温を奪われやすい雨中登山では、精神面にも影響が出やすいため、仲間と声をかけ合ったり、こまめに休憩をとることで気持ちの安定にもつながります。
無理せず「今日は引き返そう」と判断できる心の余裕も重要です。それこそが本当の「安全登山」と言えるでしょう。
快適に歩くための工夫と雨対策の考え方

雨の中で登山を「快適に」進めるには、歩き方・装備・心構えの3つがセットです。
まずは歩き方。滑りやすい場所では足を置く位置に注意し、「滑りやすくなっている」と意識するだけでも事故のリスクが減ります。濡れた木道や岩場は踏み込まずに滑らせるように下りる歩き方が有効です。
次に装備。レインウェアを着るタイミングや中の汗対策を意識しましょう。実は「レインウェアを着る前に脱ぎ着しやすい服を選んでおけばよかった」と後悔する登山者も多くいます。
また、雨対策といっても、単に装備を整えるだけでなく、「どんな雨の中でも楽しむにはどうするか?」という視点で準備することが重要です。そう思いながら装備を選ぶと、「雨が降ったけど、しっかり準備してて本当に良かった」と感じられる登山になるでしょう。