水辺のレジャーや日常の中で、水難事故は誰にでも起こりうる危険です。とくに「溺れた人」を見つけたとき、正しい救助の知識がなければ、自分も巻き込まれるリスクが高くなります。
実際、海水浴場や河川、プールでの事故では、「助けようとして二次災害に…」というケースも少なくありません。
この記事では、水難救助の基本的な方法から、救助者が取るべき安全な行動、家庭での予防策、そして緊急時に役立つかけつけアプリの活用まで、命を守るために必要な情報を分かりやすく解説していきます。
水難事故の現状と原因

日本では毎年多くの水難事故が発生しています。
消防庁の「令和4年版 消防白書」によれば、全国で発生した水難事故は1,400件以上にのぼり、そのうち約半数が死亡事故や行方不明という深刻な結果につながっています。
また、海上保安庁の統計によると、令和4年の海域における事故では、船舶事故を除いた水難救助案件が全体の約3割を占めており、迅速な対応が求められるケースが多く報告されています。
こうした事故の多くは、救助者の発見の遅れや、通報対応の遅延などが大きな要因です。
「助けたい」と思っても、正しい知識がなければ自らが要救助者になる危険もあり、水難救助の重要性が高まっています。
水難事故とは?発生原因・事故事例・防止策を徹底解説|川・海・プールで命を守るために【2025年版】
事故の発生場所には、いくつかの共通点があります。
たとえば、夏場は海水浴場での事故が非常に多く、離岸流や高波によって沖に流されるケースが後を絶ちません。また、河川では遊泳中に流されるほか、増水時の転落事故も多く発生しています。足場の悪さや急な流れは、想像以上に命を奪う危険をはらんでいます。
さらに、身近なプールでも安心はできません。監視員の一瞬のスキを突いて起こる溺水や、子どもの転倒、飛び込み事故が主な原因です。特に家庭用プールでは、大人の目が届かない時間帯に事故が起きやすく、注意が必要です。
このように、事故は「慣れた場所」「安心できる環境」でこそ油断によって発生しがちです。陸上にいるから安心という訳ではありません。
水の怖さを知り、場所ごとに適した安全対策を講じることが、命を守る最初の一歩となります。
水難救助とは?基本的な考え方

水難救助とは、海や川、プールなどで溺れている人や要救助者を安全に救出し、命を守るための一連の行動を指します。これは単なる「助ける行為」ではなく、訓練を受けた救助者が、安全性を最優先にしながら行う専門的な活動です。
実際の現場では、水難救助隊や消防隊などの関係機関が中心となり、迅速かつ冷静な判断のもとで救助が進められます。特に重要なのが、「自分が二次災害に巻き込まれないようにすること」。たとえ家族や友人であっても、むやみに飛び込むことは避け、まずは119番通報と状況確認が優先されます。
水難救助隊員は救助器具(ロープ、浮き輪、フローティング担架など)を活用しながら、状況に応じたアプローチを行います。溺れている人に直接近づくのではなく、浮力のある道具を使って自力で浮かせ、安全な場所に誘導するのが基本です。
このように、水難救助活動は「助けたい」という気持ちだけでは成り立たず、知識・準備・訓練が不可欠な命のリレーなのです。
溺れている人を見つけたときの対応【現場での行動手順】

水辺で溺れた人を発見したとき、最も重要なのは「すぐに助けに飛び込むこと」ではありません。
まずは状況の把握と自分の安全確保を最優先に行動しましょう。無理に飛び込むと、自分自身が要救助者になり、事態がさらに悪化するリスクがあります。
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まずは落ち着いて、通報と周囲の確認を
発見したら、まずは119番通報。その際には「場所」「人数」「状況」を明確に伝えることが求められます。
周囲に人がいれば協力要請し、自分だけで判断せず、安全な距離からの対応を徹底しましょう。
また、海上保安庁や消防庁など関係機関が到着するまでにできる範囲の救助活動を検討しますが、絶対に「無理はしない」ことが大原則です。
助けるときは浮力のある道具を使う
もし救助を試みる場合は、必ず「浮力のあるもの」を使って溺者に接近します。たとえば、
- ロープ
- 浮き輪
- ペットボトル(空のもの)
- フローティング担架
などが活用できます。これらを投げ渡し、本人がつかまって浮かべる状態を作ります。救助者が水に入る必要がある場合は、命綱の確保、複数人での対応、船舶やボートがあればその活用が推奨されます。
絶対にしてはいけない行動とは?
溺れている人の元に直接泳いで近づくことは、最も危険な行動のひとつです。パニックになった溺者は、本能的に近づいてきた人にしがみつこうとします。
結果として、救助者まで水中に引き込まれ、命を落とすケースも多発しています。「助けたい」という気持ちは大切ですが、命を守るには冷静な対応が何より必要です。
助ける際に絶対にやってはいけないこと

水難事故の現場では、「助けなきゃ」という強い思いが、かえって二次被害につながることがあります。
とくに知識や技術がないまま水に飛び込む行為は、救助者自身が命を落とす危険をはらんでいます。
直接接触はNG!救助者が溺れる危険性
溺れている人はパニック状態にあり、**「何かにしがみつきたい」**という本能で近くの人に飛びつきます。
その結果、救助者の体や足、手をつかんで沈めてしまうという事例が多数報告されています。実際、水難事故の約15%は「助けようとした人」が巻き込まれたケースです。
つまり、「泳げるから大丈夫」という過信は命取り。潜水器具を持っていても溺れる可能性もあります。
水の中では、体力や技術、状況判断力がなければ、あっという間に要救助者が増えるだけなのです。
人命救助をする場合、素人が助けない方がいいこともあり、とにかく早くプロに知らせて対応をしてもらう必要があります。
素手での救助よりも「浮く道具」と「声かけ」
ロープや浮き輪、ペットボトルのような浮力のあるものを投げるだけでも、状況は大きく変わります。
救助者は水に入らずに助ける方法を常に選びましょう。
また、声をかけて落ち着かせることも重要な行動のひとつです。
「そのまま浮いて待て」「近くのものにつかまって」などの冷静な声かけは、パニックをやわらげる助けになります。
その場で助けられないときに必要な行動とは?
自分の安全が確保できない状況では、「その場で助けない」という判断も命を守る行動です。
まずは通報(119・118)と現場の共有。
そして、関係者や周囲に知らせてできるだけ早く専門機関に引き継ぐことが求められます。
助けられないからといって「見捨てる」わけではありません。
助かる可能性を上げる“準備”を整えることが、真の救助活動なのです。
家庭や地域でできる水難事故の予防策

水難事故は、突然の災害や自然の脅威だけで起きるわけではありません。
日常の油断や「少し目を離しただけ」の隙から、大切な人の命が危険にさらされるケースも多くあります。
とくに子どもや高齢者は体力や判断力が弱く、家庭や地域での予防意識の高さが重要です。
家庭でできる対策とは?
まず最も基本となるのが、「知識を持つこと」。
水に落ちたときの対処法や、浮くための姿勢、ペットボトルやランドセルの浮力の活用法など、子どもと一緒に学ぶ機会を日常に取り入れることが大切です。
また、家庭用プールや川遊びをする機会があるなら、
- 大人が常に付き添う
- ライフジャケットや浮き輪等の命を助ける道具を必ず着用
- 子どもだけで水辺に近づかせない
といったルールを徹底しましょう。
「慣れてるから大丈夫」という油断こそが、事故の最大の引き金になります。
助かる確実性を上げるために日ごろからおうちのなかで水難事故について話をしておきましょう。
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地域ぐるみで事故を防ぐために
地域での声かけや見守り体制も、事故防止においては大きな力となります。
公園や海岸、河川敷など、水に近い場所で遊んでいる子どもを見かけたときは積極的に声をかけるような文化を育てることが、「人の命」を守る社会づくりに直結します。
さらに、学校や町内会での水難救助訓練や防災教育も有効です。
消防や関係機関と連携しながら、地域ぐるみで備える体制を整えましょう。
救助を必要としないために、“未然に防ぐ”という意識を
水難救助の技術や対応がいかに優れていても、そもそも事故が起きない状態を作るのが最も理想的です。
そのためには、「自分と家族の命を守る行動」を日頃から意識することが大切。
たとえば、
- 天候が悪い日は水辺に近づかない
- 危険な場所には「行かない・入らない・近づかない」
- 安全な行動を選択する“判断力”を育てる
といった日々の積み重ねが、救助を必要としない未来をつくる第一歩になります。
まとめ|水難事故から命を守るために、今できること

水難事故は、誰の身にも起こりうるものです。
特別な状況だけでなく、日常の中に潜む小さな油断や「これくらい大丈夫だろう」という気の緩みが、大きな事故につながることもあります。
この記事では、水難事故の現状や原因、救助活動の基本、家庭や地域でできる対策を紹介してきました。
“事故を防ぐ”と“命をつなぐ”両面の視点が大切だとわかります。
事故を起こさない工夫、起きたときに備える準備
- 水辺では命を守る意識を持つ
- 救助に頼らずに済む行動を選ぶ
- 体力や判断力に応じて危険を回避する
といった個人の努力はもちろん、
- 浮力のある道具を確保し活用する
- 地域ぐるみの対応体制づくり
- 焦らず、水面に浮く意識を持つ
- 防止対策の普及・啓発
など、社会全体で守る仕組みづくりも不可欠です。
また、いざというときの「対応」や「判断」を左右するのが、事前の準備と知識です。
消防・関係機関とも連携した訓練や教育を地域で進めていくことが、命を守る土台になります。
「見つかるのが早ければ、助かる命がある」

最後に、近年注目されているのが位置情報を活用した「発見の早さ」の対策です。
水難事故の多くは、発見の遅れによって助からないというケースがあります。
そんなときに役立つのが、**現在地をリアルタイムで通知できるアプリ「かけつけ」**のようなツールです。
これは全国どこでも使えて、いざというときにグループ内にSOSと居場所を一斉通知できる仕組み。
SOSを出すとリアルタイムでその人の居場所が分かります。
命を守る最後のラインとして、救助の“成功率”を引き上げる存在です。
水辺で遊ぶ場合はグループを組み、何かあったときでもリアルタイムで位置を仲間に通知できるようにしておくと助かる確率がグッと上がります。